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白内障手術は簡単か?

[2024.01.18]

(白内障手術は)簡単な手術なんでしょ?


手術前の外来で、このように言われることがあります。
その瞬間、私の表情がわずかに曇ります。
診察室に妙な空気が流れ、それを察知した患者さんが苦笑いを浮かべる、そんなことが時々あります。
患者さんとしては、安心したい。
簡単な手術です、と言ってほしい。
その心情は理解するものの、私は思ってもないことを言えないタイプで、返答に窮します。
私自身、白内障手術はこれまでずっとやってきていますが、一度も簡単と思ったことがないからです。
先人の知恵、メーカーの努力、医師の個人的研鑽で、手術が洗練され、手術時間は短かく、患者さんの苦痛もかなり少ない手術になってきています。
そうなったらなったで、さらに細かいところにこだわることができるようになり、より精度が求められるようになったところもあります。

マラソンに例えます。
ビギナーの市民ランナーがフルマラソンを走ると時間もかかりますし、疲れます。
オリンピックに出るようなプロのランナーは走っている時間こそ短いですが、記録を求めて全力で走るので、ゴール後に余裕など多分ありません。
要は突き詰めて、技術が洗練、向上したから、今度は目標が上がるので、楽になる、というわけではないのです。
走るのは簡単ですか?
プロになるほど、考え込むような気がします。

書道家の先生に文字を書くのは簡単か?と尋ねると、どのように答えるでしょうか。
判読できる文字を書くのは子供でもできるけれど、良く書くとなると、、、。

白内障手術は習得にも時間がかかりますし、習得した後も、より良く手術することを考え続けるので、全く気が抜けません。
それが面白いところで、追求する価値があるものなのですが。
白内障手術は、手術するすべての眼科医がかなりこだわりを持っています。
あまりこだわりを持っていなさそうな先生と話をしても、細部のこだわりを話し出すと盛り上がります。
エキスパートと言われるような先生はなおさらです。
あらゆる眼科手術の基本でありながら究極でもある、そんな手術であると思っています。

今夜の晩ごはんは簡単なもので良いよ、と自分が作らないのに言うのはやめた方が良い、そんな話でした。

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