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テセウスの船

[2024.03.04]

当院は開院して40年に近づいてきています。

構造駆体はしっかりと頑丈に作られており、まだまだ現役という感じです。

内部の内装や設備はどんどん変わっています。
新しい患者のニーズに応え、より快適で効率的な空間を提供するため、クリニック全体をリフォームしています。
診察室を2つに増やすことに始まり、トイレをきれいに誰にも使いやすいように、二階の廊下、部屋、トイレ、それからよく目立たないですが実は外壁も塗り直し、タイルの補修、受付周りも少し変化しています。
今回はバックヤードのスタッフルーム等を大幅に変更しました。
多少音などで患者さんにもご迷惑をお掛けすることがあったと思いますが、診療に影響が出にくいよう、いつも休診の時間を縫って作業をしてくれる工務店さんにはとても感謝しています。

外からクリニックを見るとあまり変わっていないけれど、中身はかなり変わっています。

そのプロセスで考えさせられることがあります。それは、古代ギリシャの哲学者たちが提起した有名なパラドックス、テセウスの船についてです。
このパラドックスの原型は、プルタルコスの『対比列伝』に記述されています。テセウスがアテネからクレタ島に向かう際、彼が乗る船はアテネの港に祭られた船でした。しかし、航海中に船は何度も修理や部品の交換を受け、クレタ島に到着する頃には全く違う船となっていました。
このパラドックスに対する一般的な問いは、「テセウスの船が何度も部品を交換し、修理された後でも、最終的に同じ船と見なすべきかどうか」というものです。
哲学的に、そこにあるものが同じである、ということの定義を問う、有名な逸話です。


私のクリニックも同様で、改装のプロセスで船の部品のように、様々な要素が変化しています。しかし、テセウスの船と同様、クリニックはいつも同じものであるべきでしょうか?

クリニックのリフォームは、新しい診療室の追加や待合室のデザイン変更など、多くの変化をもたらしました。しかし、この変化がクリニックのアイデンティティや使命を変えているのでしょうか?テセウスの船のように、部品を一つ一つ交換していって、最終的には全く別のものになってしまうのではないかという不安が頭をよぎります。
しかし、哲学的に見ると、クリニックも人も変化するものであるという事実を受け入れることが重要です。

テセウスの船が修理されるたびに変化し続けるように、私たちのクリニックも変化し続けるのです。その変化の中で、クリニックの本質や価値観が失われないように注意しながら、新しいニーズや技術に適応していくことが必要です。


長く通院されている患者さんからは
来るたびに変わるね!?と驚きと不安の入り混じった声が聞かれます。
でも長く勤めているスタッフをみるとやっぱりあなたの顔みると同じだわ安心したわ、と言われます。
このクリニックのリフォームプロセスを通じて、私はテセウスの船を思いました。

さらに私達の身体はもっと頻繁に新陳代謝が行われています。
細胞は日々剥がれ、抜け落ち、新たに生まれてきます。
昨日のワタシと今日のワタシ、果たして同じものなのか。
更に長期的に見ると、見た目も少々変わってきます。
水晶体が眼内レンズに入れ替わる人もおられます。

私達も皆、テセウスの船に乗っているとも感じます。

変化は避けられないものであり、それを恐れるのではなく受け入れ、柔軟に対応することが重要です。

そして、その一方で変化の中で私たちの本質的な目標や価値観を見失わず、より良い未来に向けて進んでいければと思っています。

私たちのクリニックは、テセウスの船のように、変化しながらも常に患者の健康と幸福を最優先に考えています。それが私たちの船がどんなに変わろうとも、常に同じであると感じられる理由なのです。

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